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日本を飛び出し契約を獲得する為に世界でチャンスを掴むサッカー選手が多くなってきた。
海外で外国人選手として長く活躍することは容易ではない。その理由の1つに異国の地における心構えが関係する。
そんな中、現在J2の徳島ヴォルティスで英語通訳として働き、過去に横浜FM、アルビレックス新潟、
その後海外で約17年間、計8か国(※1)4大陸、10もの海外クラブでサッカー選手としてキャリアを構築してきた深澤正博氏に、「サッカー選手として海外で成功する為に必要な心構え」について聞いた。
(※1)アルゼンチン、スペイン、カナダ、タイ、シンガポール、香港、インドネシア、カンボジア
海外1か国目は当時19歳で横浜FMから留学という形で行ったアルゼンチン(リバープレート)でした。
アルゼンチンでは、1vs1では攻守ともに絶対負けない気持ちが各人滲み出ていて「戦う姿勢」を重視する所を行ってすぐに学びました。サッカースタイルの違いについては当初驚きはありましたが、日本との生活環境面での違いはイメージしていた通りでした。
特にアルビレックス新潟からフリー移籍する形で加入した3か国目のカナダ(モントリオールインパクト)での経験が頭の中にまだ深く記憶されてますね。
紅白戦前に2つにチームをわけてウォーミングアップが開始されたんですよ。1チーム1人の選手がウォーミングアップを取り仕切ってたんですけど、1人だけ完全に別でウォーミングアップをする選手がいたんですよね。
彼はリーダーシップをとる選手に「これが自分にとって一番ベストなウオーミングアップだから」と言って頑なに一緒に参加せず、結果としてそれが許可されました。
その時、そういうのありなんだ。って思いましたね。日本では協調性の観点でそんなこと許されないですよ。でもカナダでは許された。
その時思ったのは、自分と海外の選手では生まれ育ってきた環境や慣習、考え方が特に違うという点でした。
だって、ここで日本人のリーダーだったら、許可する人はほぼいないに等しいでしょうからね。
これ誰もが理解している当たり前のことなんですけど、日本人の中にももちろん色んなタイプの日本人がいます。
同じようにカナダ人にも。小さい頃から受けてきた教育、関わってきた人等の環境が異なって、それをベースにその人の中に習慣や考え方が形成されます。国を跨ぐとそれが特に顕著にでやすくなるんですよね。
だから、日本人の僕としては、協調性や協力からはみ出る行為だったから当時の僕にとってこのケースは特に印象的で。
でも彼らからしたらそれはある種当たり前な感覚だったんだと思います。
このケースでいえば、イタリア系カナダ人とポルトガル系カナダ人でした。
ただここで大事になるのは、この許可が出たのは、お互いのゴールが一緒だったからなんです。
お互い最高のコンディションで紅白戦に臨む。個人としても活躍してチームに貢献する。その最終ゴールが一緒だから許可をした。そういうことだと思います。
あと、その国の慣習を意識するのも大切です。
外国人としてその国の慣習にあわせにいく適応能力も大事ですし、何よりさっきのケースが日本で起きていたらと考えると、
日本でチームメイトの大半は協調性の部分の点を無意識に持っていたら、その行為に対してOKというのは中々できないですよね。カナダのチームで起きたという点なので、その国やそのチームに適応するのもある種大切な点です。
海外にサッカー選手としていくと、外国人選手としての扱いに初めて変わります。枠も限られていてそこの枠で加入しますし、だからよく助っ人と言われますよね。僕はある種外国人助っ人は傭兵部隊なものなのかなとも捉えています。笑
彼らに求められるものは、勝ちにつながるプレーをする。その外国人選手がチームを勝たせてくれるか、これに尽きると思います。
僕が経験したのは、東南アジア各国でプレーしていた時なんですけど、日本人選手と一緒にプレーしているときチームのことを考えすぎる傾向、自分の外に矢印が向く人が多いかな、と感じました。
例えば、練習に遅れてくる選手がいる。日本人選手にとって目がついて、チームの為と思って注意して、結果それがその人に受け入れられずにチームとしてもはまらない、個人としても自分以外の外に気を取られがちになって、意識が散漫して、エネルギーを消費して、言い訳も多くなって、結果としてうまくいかなくなる。こんなことも見てきました。
もちろん、注意した人はチームとしての意識改革が1つのチームとしての結果につながる、そう捉えているので間違いではもちろんないです。
ただ、外国人選手として自分が常に目指さなければいけないのは、第一優先順位である結果です。
意識が外に向けられて散漫することで、第一優先順位である結果から気がそれる。
関心の輪(他への関心)が広がって、影響の輪(自分への影響)が縮む悪循環がおこる。人間にはキャパシティがあるので関心の輪が膨らむと影響の輪が小さくなって、結果から気がそれていく。と思うんですよね。
あとは、監督に矢印が向いてしまうケースの選手もよくみてきました。
自分が起用されない、またはシステムや戦術、トレーニングの内容をこう変えたら、チームの組織力があがって相手は勝てる確率があがる、こんなことを自分も含め誰しもが1度は思ったことがあると思います。
ただ、矢印の話とあわせ、ここでは責任の範囲を意識することが大切だと感じています。
カナダでは、日本人は当時前からプレスをかけてはめにいく事が主でした。契約したての時、カナダのチームではゾーンをつくり、
ブロックをつくってディフェンスをする。ただ、僕がそのスタイルの中でもはめれるときは個人的にプレスをはめに行ったりしたのですが、他の選手がそれに連動せず、結果せっかくのチャンスなのにボール奪取できず、味方に何でこないんだって声をかける。
ただそこで、1枚が剥がされたら連動して剥がされる。かつ、監督が要求している戦術はゾーンで守ることだ。と言われました。
戦術を決めるのは、監督の仕事。監督には監督の責任範囲、選手には選手の責任範囲がある。
ここであえて口を出すのではなく、基本的にはそこに適応するように努める。最終的にこの戦術が間違っているのだとしたらマネジメント側の判断で監督が変更になる。そんな捉え方をしています。
もちろん試合も選手も生の生き物なので最後はピッチ上でプレーをする選手にフレキシブルに任される部分はあるんですけど。
それに、そこで文句があるんだったら、自分がスーパーな選手になるべきだし、周りがもっとプロフェッショナルなチームや環境に行けばいい。その為には現状を把握して、目指している所までのギャップをしっかり理解して改善しないといけない。
また、自分が監督だったら、という一歩ひいて物事を考えることもそこで学びました。自分が監督だったら戦術に口出しあまりされたくないですからね。もちろんボトムアップで現場から意見を吸い上げてやっていく方法もあるので、バランス次第です。
東南アジアでは特にこういったケースはよく見ましたし、その時には監督の責任範囲に口出しをするのはどうかと思う、と実際に声をかけたこともあります。
選手へのアドバイスのときも、できないことはなるべく言わないですよ。アドバイスするのも人をみて言うか言わないか判断します。
この3点が僕が特に意識した点になります。
選手としての振る舞いは、新潟時代のファビーニョ(ファビオ・ジョゼ・ドス・サントス)と横浜FM当時の永山邦夫さんで、自分のやるべきことに集中して淡々と取り組む、そこにインスパイアされました。誰かの文句や言い訳を言っている事なんてきいたことないですよ。
チームメイトへの振る舞いでは、横浜FM当時の井原正巳さんと山口素さんで、自分がうまく行かない時や悩んでるときに、タイミングみてさりげなく、廊下ですれ違う際とかにシンプルなんですけど、絶妙な声をかけてくれて、ちゃんとみて気にかけてくれてるんだって。嬉しかったですよ。
だから海外行った時もその部分は逆に還元しようと取り組んでましたし、今の通訳の仕事においても忘れていない点です。
今はJ2の徳島ヴォルティスで、ドゥシャン(セルビア人)の英語通訳として、主にドゥシャンと日本人選手の間に入ってコミュニケーションのサポートをしているのと、ドゥシャンの私生活含めたサポートを行っています。
特に覚えているのがタイで生活していたときに、当時のバンコクユニバーシティのタイ人のチームメイトが私生活ですごくサポートをしてくれました。自分の国である日本でドゥシャンが外国人選手としてたたかっているので、当時の経験から私生活面でもしっかりサポートしてサッカーに専念できるようにしています。
基本的に海外約17年間で学んだことは宝物ですし、それはサッカー選手だけでなく今の仕事、またどの仕事にも通じる大事な部分だと思っています。
最後に、
「徳島はスペイン人監督のリカルド ロドリゲスを中心にコミュニケーションを密にとりオープンで、凄くいいチーム作りができていますよ。今年も楽しみなチームです。」
と、深澤正博は力強く話をしてくれた。