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近年、タイリーグで活躍した選手達がJリーグへ移籍するというパターンが増えてきている。これはタイサッカーの発展、タイリーグのレベルの向上と言えるだろう。
そんなタイリーグで闘い続けて今年で10シーズン目を迎え、今期はチームのキャプテンも任されている片野寛理。
なぜ彼はこんなにも長い間、異国の地でプレーし続けることができているのか?そしてチームでは外国人という立場ながら、どのようにしてキャプテンを任せられるほどの信頼感を得たのか?
そんな、片野寛理に迫る。
片野寛理
千葉県出身、1982年生まれ38歳。順天堂大学を卒業後した2005年、当時JFLに所属していた栃木SCに加入。栃木SCで3シーズンプレーした後、佐川印刷SC、ギラヴァンツ北九州(当時ニューウェーブ北九州)でプレー。2010年シーズン終了後、ギラヴァンツ北九州を契約満了となり、タイプレミアリーグのサラブリーFCへ移籍。その後、香港流浪足球会(香港)、スコータイFC(タイ)、トラートFC(タイ)を渡り歩き、現在タイリーグ2部のシーサケットFCでキャプテンを任され、チームの柱として活躍している。
順天堂大学を卒業後、栃木SC、佐川印刷SC、ギラヴァンツ北九州でプレーをし、Jリーグの舞台をも経験。その後、ギラヴァンツ北九州を契約満了となり、どのようなきっかけでタイリーグへと向ったのか?
片野「元チームメイトがタイでプレーをしていて、『片野は海外の方が向いているよ』と言われたのがきっかけ。その時はサッカーばかりやっていて、サッカー以外の世界も見てみたいと思ったタイミングと重なったんです。」
ギラヴァンツ北九州を契約満了となったのは30歳手前。節目の歳ということもあり、日本でチームを探すよりも世界を見てみたかったと語っている。
当たり前だが海外では日本人は外国人。つまり、チーム内では『助っ人外国人』立ち位置で、『外国人枠』の制限もリーグによってされている。
そんな数少ない外国人枠の1人としてプレーする難しさとは?
片野「強制的に前進するための思考力を得られたのが良かったと思います。日本にいてもそれに気付ける選手が上にいくんだと思います。最初の4年間はそれで突き進んできました。そこで得たプロとしてのあるべきマインドだったりでも味方を思う事だったり…そうしたものの蓄積が今の私を形成しているものになっています。なので日本にいてもタイにいても難しい部分は変わりません。自己表現がちゃんとできるか?チームの役に立っているか?これだけだと思います。」
Sisaket FC 試合前の集合写真(引用:Sisaket FC Facebook)
日本よりFIFAランキングは低いものの近年、着実にレベルが上がってきているタイリーグ。そんなタイリーグで10シーズン目を迎え、この10年間タイでプレーをし、何を得ることができたのか?
片野「私が来たのはタイ。日本と比べるとFIFAランクもリーグランキングも下の国です。そこで得たのは試合に出場するという選手として最も大切な機会。しかもその機会は外国人枠という日本でプレーしていては経験できない立場におかれているので、調子が悪くても風邪をひいていても場合によっては怪我をしていても休んでいる時間はありません。そういうプレッシャーの中で常にベストコンディションを保つそして結果を出すための術を身につけていけました。」
ローカル選手よりも圧倒的に結果が求められている外国人選手。どんな状況だろうと試合で結果を残すために、常にベストコンディションを保つ。
そのために片野は日々の身体のケアを欠かさない。
練習前後のストレッチや筋力トレーニング、日々の食事。
試合で結果を残すために決して準備を怠らない。これが10年間も活躍し続けられている理由だろう。
多くの人が思い浮かべるタイ人選手のイメージは『小柄、小回りが利く、足元の技術が高い』なのではないだろうか。
実際にタイのトップリーグを知る片野は、タイ人選手の特徴、日本人選手との違いについてどう見ているのか?
片野「タイ人からは日本人は勤勉で練習も真面目にしっかりやるから試合中も計算できる選手…というのが今までの日本人の強みでしたが、タイのサッカー発展の勢いに伴い選手たちのサッカーに対する意識も変わってきました。言われなくてもコンディション作りしている選手もいるし練習中も真面目に走る選手が多くなりました。1部と2部を比べるとまだ差はありますが時間はかからないと思います。
ボールを扱う技術はタイ人も上手いですしスピードやパワーのある選手もいます。ただ、日本人はボールを引き出す動きが上手いとかボールの置き所が上手い、戦術的な見方がタイ人選手より優れているとは思います。」
タイのサッカーレベルはここ数年で確実に大きな成長を遂げている。そして、それに伴い選手達のサッカーに対する意識が変わってきている。
タイ人が持っている『日本人選手はこういう選手』というイメージを破れる選手でなければ、今後タイリーグで活躍していくには難しくなってくると片野は見解している。
今シーズン、外国人という立場ながらチームのキャプテンを任されたが、今までとの心境の変化や、チームのキャプテンとして心がけていることなどはあるのか?
片野「特にないです。それは私のチームや各選手への見方とキャプテンとしてしての役割がリンクしているからだと思います。(周りの選手や監督がどう思っているかはわかりません笑)
ただ、今回のコロナの影響などピッチ外でのエラーがあった時にも選手代表としてクラブ側と話をして、お互いにそして選手全員にとってなるべく良い決断をしていかなくてはいけないのは大変でした。」
筆者も海外に3年間ほど住んでいた経験があるので分かるが、海外生活では『日本で普通に生活をしていてはありえない事』が日常的に起こる。今年で海外生活10年目を迎えた片野は、海外生活で何に困っているのか?
片野「家族との時間です。現在、妻と1歳7ヶ月になった息子は日本にいます。妻と付き合っている時からですが、多くの時間を離れて過ごして来ました。去年はリーグ後期の約4ヶ月間を一緒に生活できましたが、今年は家族ビザを取得でき次第タイに来る予定でしたがコロナの影響で来ることができませんでした。妻1人でママとパパ役を任せてしまっているので大変かと思います。息子ともまだ合計6ヶ月くらいしか一緒に過ごせていないので一緒にたくさん遊びたいです。
このように日本に住んでいては起こり得ないイレギュラーがタイではおきます。家族の時間という大きな犠牲がある中で、家族の理解の下、今私はタイにいることができています。」
海外でサッカーがしたい。
そう思っている人はたくさんいるだろう。でも中々1歩目が踏み出せず、海外へチャレンジできずに色々と悩んでいる人が多いはず。そんな方へ向けて伝えたいこととは?
片野「海外にチャレンジする理由なんて考えなくていいと思います。チャレンジしたかったらすれば良いし、思った時が”その時”なんだと思います。みんな理由を探したがります。でも、そんなのは誰も分からない。チャレンジしてから見えるものの方が多いし、そこで考えが変わったて良いと思います。
サッカーをする場所は世界中にあって違うのはそこでのルール(価値観)だけです。自分自身で追求した先にある自分が求められている場所でプレーできる事の大切さや楽しさ、プレッシャーを感じて欲しいし、その中で活躍する選手が1人でも多く出てくることが、日本のサッカー発展には必要なので多くの選手に挑戦してもらいたいです。」
海外にチャレンジしたいと思った時が『その時』というのは、まさに片野自身の体験談とも言えるだろう。
そして片野は今後の目標について『40歳までプレーすること』と語っている。タイリーグ10シーズン目を迎えた今年38歳となった。
2年後...
片野はチームの中心として活躍しているに違いない。片野の今後に注目だ。